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文芸サークル「鉄人四迷」のページ

文芸サークル「鉄人四迷」のページです。 オリジナルの小説・詩・脚本を発表しています。

「回想」(I)

よく陽の当たる部屋の
あちこちに血管が浮いている
がきの声に包まれて
まどろんでいる
唐突に靴下なんか
落ちているアパートの駐車場
目をこすった指先に
まつげがついている
濡れたアスファルトの
真ん中で蝶が死んでいた
風の強い日は
唇が砂の味になる
小学校の先生
薄い胸と大きい鼻に
砂糖もかけず
むさぼりくって
絞首台にくくられた
匿名の男の匿名の息子
赤ん坊が馬鹿みたいに泣いた
通夜の帰りに
井戸の跡が
当たり前のようにそこにあり
障子の穴には
ホオズキを投げて遊んだ気がする
錆びた柵の向こう
畑青々
バックミラーの中
青空ばかりの坂道
強い風に向かって
ほえている犬
あの犬の子が生まれる
2時間前まで
同じ制服を着て
ちがう笑い方で笑い
裂けて
汗をかいて
窓枠に置かれた炭酸の缶
公衆便所に生えた
亀頭の赤さ
楽しい影も淋しい影も
線路の上で歪んでいた
耳をふさいだ
指が冷たかった
このところは
背が丸まっている

大きなスコップで青空ごと
どぶをさらっていく
昼飯を食べたあとは
錆びた線路で寝る猫を
みんなで見ている
また職のない
月曜日がくる
プラスチックの
夕日が
目にささる
ガラス越しの町が
厚みをなくす
地下鉄の黒い窓に
塗りこめられたまま
帰る
口笛に
埃がつもる部屋


堂々とした

すごい月

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「バタフライ」(I)

夏の日。昼下がり。狭い部屋。
「カズオ」がうちわで顔を扇ぎながら、仰向けで寝ている。
窓には風鈴。
床には扇風機、携帯電話、アイスの空容器、雑誌なんかがごちゃごちゃ置かれている。


母親の声
(部屋の外から)「カズオー。……カズオ! カズオ!」

カズオ
「うるっせぇなクソババア! なんだよ!」

母親の声
「アンタ、部活行かないの?」

カズオ
「行かねぇよ! 腹痛ぇんだよ!」

母親の声
「アンタ、部活行かないんだったら、ちょっと私、アレ! 買い物行ってくるから! だからアンタ、アレ! アレ! よろしく!」

カズオ
「わっかんねぇよクソババア! なんだよ!?」

母親の声
「あの、ポンタの餌! あと、雨降るかもしんないから今日! 洗濯もん!」

カズオ
「あぁ!?」

母親の声
「お願いね!」

カズオ
「あぁー!?」

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「あの街」(空疎)

テーマ:月光と線路



 午後十一時をまわった暗い駅のホームで、ひとり立つ僕の耳に、踏み切りの音が聞こえてくる。カンカンカンカン、踏み切りの音は絶え間なく響き、電車の到来を告げる。僕の両足は震え、両眼は落ち着きをなくす。僕はまだ、帰りたくない。この場所を、離れたくない。だけど踏み切りの音は絶え間なく響き、電車の到来を告げる。カンカンカンカン、踏み切りの音が、僕に帰れと呼びかける。

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「晩夏」(I)

テーマ:月光と線路



 私の実家の裏には、私鉄の線路が通っている。いつ出来たのかわからないくらい古い単線で、田舎だからあまり電車も通らない。そのせいかいつも不思議な静けさが漂っていて、私は昔から、二階の自分の部屋の窓からこの線路をただ眺めるのが好きだった。線路の一方はゆるやかな上り坂になっていて、山へと続いている。もう一方は左右にひょろひょろと背の高い木々を見ながら、港へ出るようになっている。私の家はそのまんなかにあり、山から吹き降ろす風と、海から駆けてくる風がぶつかり合って、時々ぐるぐると妙な音を立てたりした。

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「月明かりの線路の上でひとり歩き続ける方法」(小石薫)

テーマ:月光と線路



 ・この作品は歌手谷山浩子さんへの、特に「ひとりでおかえり」「同じ月を見ている」「僕は帰る、きっと帰る」の3曲へのオマージュです。

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お知らせ

当サイトに掲載しているコント「ずれ」が、
「北九州市立大学演劇研究会」様に上演していただけることとなりました。

「北九州市立大学演劇研究会」様ホームページ

・名前   北九州市立大学演劇研究会
・上演日時 4月5日、6日、8日 計6公演
・上演会場 北九州市立大学北方キャンパス六号館105教室
・料金   無料

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「サンプリング - 02」(I)

二疋の蟹の子供らが青白い水の底で話していました。

『クラムボンはわらったよ。』
『クラムボンはかぷかぷわらったよ。』
『クラムボンはかぷかぷかぷかぷわらったよ。』
『クラムボンはとにかくかぷかぷわらったよ。』
『凄じい勢でかぷかぷかぷかぷわらったよ。
  かぷかぷわらっていたよクラムボンは。』

『なぜクラムボンはわらったの。』
『しらない。』

*****

智恵子は東京にクラムボンが無いという、
ほんとのかぷかぷが見たいという。

ささやくような声で

その日私は
黄金色に輝く恐ろしい私を
小島の磯の白浜へ仕掛けて来た。

そしたらオツベルが私を射ちだした。六連発のピストルさ。

ドーン、かぷかぷ
  ドーン、かぷかぷ
ドーン、かぷかぷ
  ドーン、かぷかぷ
ドーン、かぷかぷ
  ド か ぷ ぷ ぷ ぷ ぷ ーン

『クラムボンは大爆発したよ。』
『それならなぜクラムボンはわらったの。』
『しらない。』

*****

私はその友達の名をKと呼んでおきます。
私はこのKと小供の時からの仲好でした。

Kは私に向かって、かぷかぷ笑いました。
Kは澄ました顔をして、かぷかぷ笑いました。
Kはあまりにも、かぷかぷ笑いました。

ある日
Kは私の顔を見るや否や
イスの中へすっぽりともぐりこみ
かぷかぷ笑いました。
私は一週間ほど腰を抜かしました。

Kは笑いました。
お嬢さんもかぷかぷ笑いました。

私は狼が隙を見て羊の咽喉笛へ食い付くように
Kを

『クラムボンは殺されたよ。』
『それならなぜ殺された。』
『しらない。』
『それならなぜ殺された。』
『わからない。』

*****

まだあげ初めし前髪の
林檎のもとに見えしとき
前にさしたるクラムボン
われ泣きぬれて
蟹とたわむる

*****

私の幻燈はこれでおしまいであります。

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「恋に効く薬」(空疎)

 近頃の僕は全くもって様子がおかしい。どうにもあの娘を前にすると、決まって調子が狂ってしまう。近頃じゃ思い浮かべただけで胸が苦しくなる呼吸が辛い。ひどい場合になると手は震えだし言葉はどもる。いったい僕は、どうしてしまったんだろう。あぁ、また胸が苦しくなってきた。呼吸が辛い。これはいったい、どういうことだ?

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コント「相田の妄想地獄変」(I)

企画説明はこちら。


1999年6月25日(金)

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中編小説「光が届く」(小石薫)

企画説明はこちら。


1999年6月14日(月)

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当サイトについて

文芸サークル「鉄人四迷」の作品を公開しています。
小説・詩・脚本を中心に、月ごとのテーマ読み物など随時更新中。
それぞれ違うタイプの作家たちによる、バラエティ豊かな作品をお楽しみください。(作者紹介はこちら。
ご意見・ご感想お待ちしております! コメント欄もしくはメールフォームよりお送りください。

なお、当サイトで公開している各作品の著作権はすべて作者に帰属します。
掲載された文章の無断転用を禁じます。

作者紹介

空疎

あなたはただのゼリーです
見える光は全部嘘
聞える音は全部嘘
あなたはただの
ふるえるゼリー
ひとりふるえる
ただのゼリー

中編小説「ゼリーの見た夢」より


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六井 象/I

 失恋した友人が髪の毛を短く切ってきた。
 彼女の髪の毛の中に、爆弾の導火線が一本混じっていたと知ったのは、それからすぐ後のことだった。


短編小説「鋏」より

個人サイト

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小石薫

美代子は必死だ。一生懸命に声を張り上げて、誰かが、聞いて、興味を持って、自分のいる教室のドアを開けてくれることを、ずっと待っている。
 伝えたいことがあると言った。
 私には、あるだろうか。伝えたいもの。伝えたい気持ち。私の中にあるのは、ぬるく、濡れそぼった、この、寂しさだけ。

短編小説「夕焼け校舎」より


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金魚風船


「私の事、好き?」


「え?」


「ごめん、いきなり」


「ごっつ好きやで」


「ほんとに?」


「当たり前やろ、俺のたった一人の娘なんやから」


「そっか」


間。



「やっぱ、別のことしよっか」


「え? なんで? 凄い楽しいのに」


「じゃあ、もっと楽しそうにやれよ。そんな下ばっかり見とったらな、楽しい事も嬉しいことも、いつの間にか全部通り過ぎてしまうぞ」

短編脚本「お父さん」より

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