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文芸サークル「鉄人四迷」のページ

文芸サークル「鉄人四迷」のページです。 オリジナルの小説・詩・脚本を発表しています。

「蛇の囁き」(空疎)

こしょこしょこしょ


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どこか遠くへ行きたいのだけど
僕はどこへも行けなくて
風の吹く先に歩いていけば
明るい何かが待っているかな
僕はなんにもない場所で
そんなことを考えている
風が吹いています
風が吹いています
誰かが僕を
呼んでいるような気がします


まだ覚えていますか
太陽の光に照らされたあの道を
小雨の降る
あの道を


誰か聞いてください
僕は悲しいのです
涙を流して泣きたいのです
もう耐えられないのです
僕は悲しいのです
胸が辛くてならないのです
僕はどうすれば救われるのでしょうか
誰か教えてください
この悲しみが去るのなら
僕はなんだってやってみせます
眠りにつけば
あぁまた明日がやって来る


誰かを好きだって気持ちよりも
尊いものがあるでしょうか
気持ちが繋がることよりも
幸せなことがあるでしょうか
君とふたりでいられたら
僕はどんな風にだって向かっていけた
生きていけた
ふたり
同じ世界を見つめていれば
できないことは何もなかった
何も怖くなかった
恋だけが僕を照らしてくれる
それなのに
今はこの世界に
ひとりきり


オリオン座
水を流し続ける蛇口
流れる星
冷たい空気
月光
遠く近い山々
体温
ブラックコーヒー
髪の匂い
ベランダの洗濯物
君の声
忘れられないよ
忘れたくないよ
あの頃を
あの日々を


愛は
愛を
教えてくれる
愛と
愛は
互いに繋がり
ひとつの世界を
築き上げる
愛よ
愛よ
輝いておくれ
世界のちょうど
まんなかで
美しく輝いておくれ
愛と
愛の
調和こそが
幸福の秘密
なのだから


緑色をした82匹のネズミが
夜の空を駆けていく
そのネズミたちを深紅のトラが追いかける
無数の流星が流れて
まるで太陽が輝いているかのように
明るい
ネズミとトラの追いかけっこを
地上から眺める僕は
果たして何色をしているだろうか
時間よ進め
結末を見せろ
いつか世界は
回転を始める
緑色をした82匹のネズミと
深紅のトラと
無数に流れる流星と僕が
ひとつに溶けあって
溶けあって……


時々、自分が今どこに住んでいて、
何をしているのか、
わからなくなることがある。


行き場のないふたりのこどもは
階段に座り込む
風は冷たい
だけどふたりのこどもには
どこにも行き場がないのだから
階段に座っていることしかできなくて
ひとつの袋のお菓子を分け合いながら
小さな声で
囁きあう
冷たい風に吹かれながら
どうして私達には
行き場がないのだろう
どうして私達は
生まれてきたのだろう
だけどふたりのこどもには
答えが見つけられなくて
静かな夜の階段に
並んで座り込んでいる


私は恋なんてしてないし
愛なんて欲しくない
私は怒ってなんかいないし
悲しんでなんかいない
ただ叫びたいから叫んでいるだけ
意味のないことを叫んでいるだけ
誰も私に近づかないで
もし私の隣になんか来たら
私はあなたに噛みついちゃうから
私は恋なんてしてないし
愛なんて欲しくない
私は怒ってなんかいないし
悲しんでなんかいない
私よ、叫べ
ただ叫べ
何も意味のないことを
あらん限りの声で
叫べ
叫べ
何も意味のないことを


何だっていいから
欲しいものをひとつあげると言われても
私は答えられなかった
欲しいものがないわけじゃない
私は何だって欲しい
だけど
ひとつだけ
たったひとつだけ
私が欲しいのは
私は口を噤む
彼は本当のことを言っていたのだろうか?


暗く狭い部屋に
収められた写真たちは
誰に思い出されることもなく
見返されることもなく
静かにその身を
埃に埋めていく
太陽の輝く日があった
切ない雨の降る日があった
けれどそれらの日々は皆
過ぎ去ってしまって
遠くへ遠くへ
離れていく
遠くへ遠くへ


愛より愛の似姿に
剣より剣の幻影に
三月の風が吹く
本当の名前を教えて
私の眼を開いて
真実の愛と剣で
誰にも聞こえない
音が聞こえてきたら
それが
あの扉の開く
最後の合図


こんな気持ちのいい日には
なんとなく
なんとなく
君のことを思い出す
君も
この気持ちのいい日を
楽しんでいますか
同じ陽射しを浴びていますか
そんなことを思いながら
コーヒーを飲んで
タバコを吸う
祝日の午後
君はどうしていますか


誰かこの悲鳴に気づいてよ
私はこんなに
声を張り上げているのに
誰一人見向きもしない
指がふるえる
私には悲鳴をあげることしかできないのに
あなたが気づいてくれないと

死んじゃうよ
もうすぐ死んじゃうよ
底のない沼に
動かない足をとられて
沈んでいく
沈んでいく
誰にも気づかれないままに
沈んでいくよ


笑顔が通り過ぎていく
このコーヒーを飲み終えたら
もう家に帰ろう
もう家に帰ろう


眠れない
頭の中の羊は
安らかな寝息をたてて
眠っている
平和な平原で
なんの憂いもなく
眠っている
その光景は
眠れない
僕の頭に
安らぎを与えるけれど
眠れない事実は
変わることなく
僕は
眠れない
頭の中の
羊の姿を
じっと見つめている


落ち着かない
目が泳ぐのがわかる
手が行き場をなくす
耳には音楽が流れ込んでくる
木曜の夜
コインランドリーに
挙動不審な男がひとり
息が
胸が苦しい
この頭は何を考えているのか
何なのかわからない思いが
脳裡に満ちている
色はなく
形もない
ノイズ ノイズ ノイズ
ノイズで頭が割れそう
ああ
落ち着かない



足音
気配



折れた傘
果てのない荒野

下りの電車
東京駅



夢を見た
腕に太い血管の流れる夢を
これを切れば
死ぬのだと思った


七分間の思索の果てに
思いがどこへも辿り着かないのなら
八分間の詩作の末に
できあがった言葉の群れは
いったい何処へ向かうのでしょうか
私を何処へ
連れて行ってくれるのでしょうか
私は答えを知らないから
思いを練り上げ
詩を作る
詩よ
詩よ
どうか私を
連れて行っておくれ
誰の手も届かない
何処か遠くへ
遠い彼方へ
他に行く先は
ないのだから


きっといつか
僕はぶっ壊れてしまうだろう
それは明日かもしれないし
50年先のことかもしれない
いつになるかはわからない
でも必ず
いつか
グラスから水が溢れるように
ぶっ壊れてしまうだろう
それまでに
書き残しておきたい
少しでも多くのことを
この気持ちが
いつか
誰かに
届くように


「タスケテ」
か細い声しか出ない
蚊の鳴く声より
細い声しか
私は本当に助けて欲しいのに
これでは誰も
ふりむいてくれないではないか
息を吸って
肺にためて
喉をふるわせる
「タスケテ」
どうしてこんなに
細い声しか出ないのか
私はどうして
しまったのか
ああ助けてよ
誰か
私をふりむいて


手紙を書いて
瓶に詰めて
海に流そう
きっと誰かに
私の声が届くから
海の向こうの
知らない誰かと
繋がることが
できたなら
それはきっと
とても幸せな
気持ちになることでしょう
誰かよ
誰かよ
Hello, Hello
返事を書いてね
私の手紙に
きっと、きっとよ


色んな場所にいた
色んなことをした
でも今はもうない
光の速さで過ぎていく
さよならを言う暇もなく
みんな消えていく
もうあそこには立てないし
あの人には会えないし
なのに
できることは何もなくて
ただただ光の速さで吹く風に
この身をさらしているばかり
流れていく
流れていく
さよならを言う暇もなく
見送られることもなく
見送ることもなく
流れていくよ
全部 全部 全部


空気があり余っているから
瓶に詰めよう
そして1000年経ったら
また開けてみよう
空気があり余っていた
今日を思い出すために
あまり空気が多いから
今日は溺れてしまいそう
でも慣れてきたら
空気の中を
すいすい泳げた
瓶詰めにした
空気を吸って
1000年後にまた
空気の中を泳いだ今日を
思い返してみよう
その頃にはきっと私
幸せになっているから


静かな夜
何の音もしない
心臓の鼓動が聞こえてきそう
血流を肌で感じられそう
眠たい匂いがする
誰もがこんな風に
心穏やかに
いられたらいいのに
何もない時間
少し暑い
もう10月も
10日になろうというのに
人間はどうすれば
幸せになれるのだろうか
扇風機をまわそうか
まだしまっていないから
風を起こそう
涼しい風を


私は一匹の寂しい猫です。
私の家には古いランプがひとつあります。
私は古いランプの家に住んでいます。
私は暗い家に帰ります。
私はそして古いランプに火をつけます。
私の家はすると明るくなります。
私のテーブルと本棚が照らし出されます。
私はほっとします。
私の安心はひとつの古いランプにあります。
私は本を読みます。
私には難しい本は読めません。
私は絵の多い本を読みます。
私の古いランプの灯りの下で。
でも本当は、
木の洞に住んでいる。
古いランプなんかない、
木の洞に住んでいる。
ただ一匹の猫。


この胸の悲しみを
一体どうしてくれようか
丸めて捨ててしまおうか
焚き火にくべてしまおうか
けれどまったくそんなことは
出来ようはずもないのであって
一番深い場所に根を張って
芯の芯から揺さぶりかける
飲み込まれないように
溺れないように
誰かに伝わりますように
私は誰?
私の名前は
悲しみです。


名前なんかない
そんなもの燃やして灰にして
捨ててしまった
夜の電車が走っていく
雨が降っている
名前のない俺は
誰でもない
ミルクティーを飲む
音楽を聴く
だけど名前は
持っていない
人混みを行く
ぐるぐると回転する世界
苦しくなる
名前なんかいらない
なんの価値もないから
もうなにもかもが



からっぽのバスから漏れる光が
夜を駆け抜けていく
私をどこかに連れていって
夜が去らないうちに
バスよ
遠きへ行くバスよ
お前は何処へ行くの
私もそこへ連れていって
どこでもない場所へ
帰る家なんてないから
どうせからっぽのバスなんだから
一人くらい乗せても
かまわないでしょ
目眩
群青
小春日和
からっぽのバスから漏れる光に
私は私の夢を託す


生まれ変わることができるなら
私はクラゲになりたい
クラゲは死ぬと
水になる
クラゲは海を
流れていく
クラゲは恋も悲しみも知らない
ただただ海を
流れていく
波の行く先へ
流れていく
クラゲは生きるからっぽ
0kgの生命体
あぁ神様
人間はもう嫌なのです


誰かに呼ばれた
ような気がして
振り返ってみたけれど
そこには風が吹いているだけだった


悲しい悲しいとばかり言っていたら
なんだかあんまり悲しくなくなって
それが私には堪らなく悲しいのです
あぁ悲しい悲しい
悲しくない
悲しい悲しい
悲しくない
悲しいは心に非ず
悲しいは魂なりけり
魂はいつだって独りぼっち
魂はいつだって悲しい
孤独の悲しいこそが孤悲なりけり
魂は孤悲をしている
魂は孤悲をしている
あぁ悲しい悲しい
悲しくない

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作者紹介

空疎

あなたはただのゼリーです
見える光は全部嘘
聞える音は全部嘘
あなたはただの
ふるえるゼリー
ひとりふるえる
ただのゼリー

中編小説「ゼリーの見た夢」より


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六井 象/I

 失恋した友人が髪の毛を短く切ってきた。
 彼女の髪の毛の中に、爆弾の導火線が一本混じっていたと知ったのは、それからすぐ後のことだった。


短編小説「鋏」より

個人サイト

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小石薫

美代子は必死だ。一生懸命に声を張り上げて、誰かが、聞いて、興味を持って、自分のいる教室のドアを開けてくれることを、ずっと待っている。
 伝えたいことがあると言った。
 私には、あるだろうか。伝えたいもの。伝えたい気持ち。私の中にあるのは、ぬるく、濡れそぼった、この、寂しさだけ。

短編小説「夕焼け校舎」より


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金魚風船


「私の事、好き?」


「え?」


「ごめん、いきなり」


「ごっつ好きやで」


「ほんとに?」


「当たり前やろ、俺のたった一人の娘なんやから」


「そっか」


間。



「やっぱ、別のことしよっか」


「え? なんで? 凄い楽しいのに」


「じゃあ、もっと楽しそうにやれよ。そんな下ばっかり見とったらな、楽しい事も嬉しいことも、いつの間にか全部通り過ぎてしまうぞ」

短編脚本「お父さん」より

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