忍者ブログ

文芸サークル「鉄人四迷」のページ

文芸サークル「鉄人四迷」のページです。 オリジナルの小説・詩・脚本を発表しています。

[PR]

×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

「滴(Tちゃんへ)」(I)



おかあさんは
15時のキッチンで
昔不倫していた禿げた男が
ずいぶん前に寄越したメールを
日焼けしない指で読み返している

あなたの話はいつだって
「だけど」とか「でも」で始まって
イガイガするような理屈と過去と
さんざ乳くりあった挙句
最後には僕を透明にして
ひびわれたような顔で
ふてくされてしまう
僕が欲しかったのは
3ヶ月も4ヶ月も前に一度だけ触れた
あなたの小さな胸のぬくもり
僕は透明なまま
あなたの過去から姿を消すが
最後に一つ教えてほしい
これは大きな賭けなのよって
いつかあなたは言ってたけどさ
これって何のことだったの?

>>

おとうさんは
20時のカラオケボックスで
動物園のにおいがするスーツを
ソファに投げて
一人ウーロンハイを飲みながら
ヘイジュードをリクエストする
マイクのスイッチは切ってあるから
流れるのは瑞々しい伴奏だけ
ビートルズはいいよなと思うけど
何がいいのかは説明できない
隣の部屋から猫の喧嘩のような
歌声が聞こえてくる
あれはたぶんアンダルシアに憧れて
もちろん真島昌利のほう
ブルーハーツなんか好きじゃなかったけど
あれをきくと
息子が小さかった頃のことを思い出す
ドラえもんの本を指さしながら
これなぁに?って聞いたら
息子は
食べたことないからわかんない
って答えたんだ
あの大笑いから22年も経ってしまった

>>>

おにいさんは
22時の自室で
縮んだちんぽこを夜風に晒しながら
ダッチワイフの空気を抜いている
足踏みポンプがぜえぜえと
肩で息をしている
ふと目に入る
本棚のコカコーラ・レッスン
大学のゼミでやったきり
二度と読んだことがない気取った本
ローションがこびりついた指でぺらぺらめくれば
柔らかい言葉の横に引かれた
幾本ものマーカーのラインと
名辞とか名辞以前とか
意味とか無意味とか
他者とか自己とか存在とかとか
汚い文字で綴られたメモの数々
同じゼミの女の子のおっぱいが大きすぎて
結局何にもわからなかった
っていうか学校で習ったことなんて
ほとんど何も覚えていない
ぼんやり記憶を漂っているのは
国語の教科書の芥川
こちらをじっと見つめる視線が怖くて
タモリみたいなサングラスで
大きなあの目を塗りつぶしたんだっけ
気づけばダッチワイフが
足下でぺしゃんこになっている



7時のリビングで
かぞくは朝食を食べている
詩でも書けそうな静寂のなか
誰かが小さく咳をする

拍手

PR

当サイトについて

文芸サークル「鉄人四迷」の作品を公開しています。
小説・詩・脚本を中心に、月ごとのテーマ読み物など随時更新中。
それぞれ違うタイプの作家たちによる、バラエティ豊かな作品をお楽しみください。(作者紹介はこちら。
ご意見・ご感想お待ちしております! コメント欄もしくはメールフォームよりお送りください。

なお、当サイトで公開している各作品の著作権はすべて作者に帰属します。
掲載された文章の無断転用を禁じます。

作者紹介

空疎

あなたはただのゼリーです
見える光は全部嘘
聞える音は全部嘘
あなたはただの
ふるえるゼリー
ひとりふるえる
ただのゼリー

中編小説「ゼリーの見た夢」より


---------------------------



姉妹は仲の悪いまま年老いて
 町は背を伸ばし肥え太る
幾度かの通夜と性交を経て
 雪は降らなくなった
生まれた家は駅に食われたが
 風は相変わらず強く吹いている
姉妹は仲の悪いまま年老いたが
 市長に品が無い
 という意見だけは一致している


「姉妹は」より

個人サイト

---------------------------

小石薫

美代子は必死だ。一生懸命に声を張り上げて、誰かが、聞いて、興味を持って、自分のいる教室のドアを開けてくれることを、ずっと待っている。
 伝えたいことがあると言った。
 私には、あるだろうか。伝えたいもの。伝えたい気持ち。私の中にあるのは、ぬるく、濡れそぼった、この、寂しさだけ。

短編小説「夕焼け校舎」より


---------------------------

金魚風船


「私の事、好き?」


「え?」


「ごめん、いきなり」


「ごっつ好きやで」


「ほんとに?」


「当たり前やろ、俺のたった一人の娘なんやから」


「そっか」


間。



「やっぱ、別のことしよっか」


「え? なんで? 凄い楽しいのに」


「じゃあ、もっと楽しそうにやれよ。そんな下ばっかり見とったらな、楽しい事も嬉しいことも、いつの間にか全部通り過ぎてしまうぞ」

短編脚本「お父さん」より

お問い合わせメールフォーム

カレンダー

05 2018/06 07
S M T W T F S
1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30

リンクについて

リンクはご自由にお貼りください。
連絡は必須ではありませんが、いただけたら喜びます。
必要であれば下記のバナーをご利用ください。





サイト名 :
文芸サークル「鉄人四迷」のページ
URL :
http://4mei.blog.shinobi.jp/

ブログ内検索

P R

Copyright © 文芸サークル「鉄人四迷」のページ : All rights reserved

TemplateDesign by KARMA7

忍者ブログ [PR]