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文芸サークル「鉄人四迷」のページ

文芸サークル「鉄人四迷」のページです。 オリジナルの小説・詩・脚本を発表しています。

むだい(六井 象)

あたま が おもい おもい で おもい
いいこと ないか ないから ないた
おもいで もいで といれ に すてて
いいこと ないな ないから ないた

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自由律俳句 百首(2012-2016詠)(六井象)


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「蛇の囁き」(空疎)

こしょこしょこしょ

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「万寿坂」(小石薫)

私が生まれたこの街に
万寿坂という坂がある
丘の上と麓を繋ぐ
めでたい名前の坂がある

母は坂を降ると言う
麓のスーパーに買い物へ行く時に
必ず通る万寿坂
母は買い物へ行く時には
坂を降るといつも言う

私が育ったこの街に
万寿坂という坂がある
丘の上と麓を繋ぐ
避けて通れぬ坂がある

仲間は坂を登ると言う
丘の上の学校に毎朝通う時に
必ず通る万寿坂
私らの登校は文字通り
坂を登るとみんな言う

私が捨てたあの街に
万寿坂という坂がある
丘の上と麓を繋ぐ
恋しい名前の坂がある

彼はいつか見たいと言う
私がふるさとの思い出を話す時に
必ず通る万寿坂
私らがいつも歩いた坂を
いつか見たいと彼は言う

私が夢見るあの街に
万寿坂という坂がある

万寿坂という坂がある

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「world is mine ~世界が君を愛してる~」(小石薫)

曇り空君を包む
見えない空忘れた

慰める歌声さえ
聞けないまま時は過ぎ去る

もしもここでこのまま凍えきってしまえば
君を生かす愛さえ見えないまま

world is mine
明日が来れば
world is mine
陽がまた昇る
world is mine
朝焼けの光のなか
僕らあの日恋をしたね
そうさこの世界に


雨だって星のエール
涙隠す水のヴェール

俯いた君の横で
季節の花微笑んでる

君が気づかなくても愛はいつもここにある
君が顔を挙げれば見つけられる

world is mine
心の奥
world is mine
宿る記憶
world is mine
夕闇の中にいても
僕らまたね恋ができる
いつかこの世界に

(world is mine)

world is mine
心の奥
world is mine
宿る記憶
world is mine
寂しい時は思い出して
顔を挙げて瞳あけて
歩いてゆく呪文

君を愛している

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「いつだか思った言葉たち(吉祥寺の通りから)」(空疎)

拙歌六編

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「滴(Tちゃんへ)」(I)



おかあさんは
15時のキッチンで
昔不倫していた禿げた男が
ずいぶん前に寄越したメールを
日焼けしない指で読み返している

あなたの話はいつだって
「だけど」とか「でも」で始まって
イガイガするような理屈と過去と
さんざ乳くりあった挙句
最後には僕を透明にして
ひびわれたような顔で
ふてくされてしまう
僕が欲しかったのは
3ヶ月も4ヶ月も前に一度だけ触れた
あなたの小さな胸のぬくもり
僕は透明なまま
あなたの過去から姿を消すが
最後に一つ教えてほしい
これは大きな賭けなのよって
いつかあなたは言ってたけどさ
これって何のことだったの?

>>

おとうさんは
20時のカラオケボックスで
動物園のにおいがするスーツを
ソファに投げて
一人ウーロンハイを飲みながら
ヘイジュードをリクエストする
マイクのスイッチは切ってあるから
流れるのは瑞々しい伴奏だけ
ビートルズはいいよなと思うけど
何がいいのかは説明できない
隣の部屋から猫の喧嘩のような
歌声が聞こえてくる
あれはたぶんアンダルシアに憧れて
もちろん真島昌利のほう
ブルーハーツなんか好きじゃなかったけど
あれをきくと
息子が小さかった頃のことを思い出す
ドラえもんの本を指さしながら
これなぁに?って聞いたら
息子は
食べたことないからわかんない
って答えたんだ
あの大笑いから22年も経ってしまった

>>>

おにいさんは
22時の自室で
縮んだちんぽこを夜風に晒しながら
ダッチワイフの空気を抜いている
足踏みポンプがぜえぜえと
肩で息をしている
ふと目に入る
本棚のコカコーラ・レッスン
大学のゼミでやったきり
二度と読んだことがない気取った本
ローションがこびりついた指でぺらぺらめくれば
柔らかい言葉の横に引かれた
幾本ものマーカーのラインと
名辞とか名辞以前とか
意味とか無意味とか
他者とか自己とか存在とかとか
汚い文字で綴られたメモの数々
同じゼミの女の子のおっぱいが大きすぎて
結局何にもわからなかった
っていうか学校で習ったことなんて
ほとんど何も覚えていない
ぼんやり記憶を漂っているのは
国語の教科書の芥川
こちらをじっと見つめる視線が怖くて
タモリみたいなサングラスで
大きなあの目を塗りつぶしたんだっけ
気づけばダッチワイフが
足下でぺしゃんこになっている



7時のリビングで
かぞくは朝食を食べている
詩でも書けそうな静寂のなか
誰かが小さく咳をする

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「ゆげ」(I)

仕事からの帰り道、歩きながら自分の家に電話をかける。誰も出ない。留守番電話に切り替わるので、伝言を残す。何を話すわけではないので伝言という言い方は正確ではないかもしれない。私は受話器に向かってひたすら息を吐く。吐きながら、歩くスピードを少しずつ早くする。とちゅう長いのぼり坂があったりして、息はどんどん荒くなっていく。やがて家の前に着いたところで、私は電話を切る。もう汗びっしょりだ。
部屋に入り、服を着替えて、水を飲みながら、今日のことをいろいろ思い出す。街は朝から賑やかだった。今日も誰とも話さなかった。昼休みに公園に行って、ベンチの上で眠っている猫を見たが、蠅がたくさんたかっていたから、あれは死にかけていたのかもしれなかった。
家の電話がちかちか光っている。伝言が残されているのだ。再生ボタンを押す。この瞬間はいつもドキドキするので、爪を噛んで心を落ち着かせる。やがて小さなスピーカーから、賑やかな街の喧噪と、私が息を吐く音が、交互に聞こえてくる。
私の部屋はいつも寒いから、吐く息は受話器から湯気となって立ち上る。私はそれをじっと見ている。ふと昼間の猫のことを思い出し、すぐにどうでもよくなる。
坂に差し掛かったのだろう、やがて息遣いが荒くなると、受話器から湯気が勢いよく噴き出し、部屋じゅうに充満する。その湯気は畑を焼いたときのようなにおいがする。そのにおいを嗅ぐと実家が思い出されてほっとする。ほっとした背中に夜がのしかかってくる。

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「ふね」(I)

娘二人と旦那を殺したので、すぐに地獄へ行くことになった。地獄へ行く日の朝、出かける支度をしながら、重い石の下に閉じこめられているときのような暗ーい、それでいてどこか可笑しい気持ちになった。私を地獄へ連れて行くための乗り物は、大きな動物のにおいがする、屋根つきの小舟で、運転手はジャガイモみたいな目の汗くさい男で、がっかりしたけど、面白かったのは、運転席に今期アニメのフィギュア、ガッツリしたやつじゃなくて、ちっちゃいフィギュアが並べられてて、でも、ラジオはボブ・ディランか何かを流してて、それが合ってなくて面白かった。でも笑ったら怒られた。怒られたら寂しくなった。

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短歌集「泡沫」(I)

虫ピンで留めたスカート野の原に山と積まれた悲しき玩具



憧れた人は熱砂の舌の上ジョン・レノンみたいな丸眼鏡



夏風は口数がちょっと多すぎて鳩サブレーの首ももげ居り



日当たりの良いその乳房をごまかしてよだれの痕を拭う停車場



鈴が鳴るよなキスだったわと目を細める母のうんこのビー玉取る夏



な感じを重ねて挙句ジュリーのように歌わせてくれウンコな人生



包みから飛び出た飴と哲学は横浜駅のロッカーの中



悩ましく騒ぐ産毛をポケットに詰めてよいよい帰りは怖い



嘘つきと大嘘つきのささやきを吸って膨れる寝床の闇は



忌々しい忌々しい忌々しいチロチロ燃える雪積もる丘



はつ恋は卵の殻の内側に長き睫毛を残して死ねり

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当サイトについて

文芸サークル「鉄人四迷」の作品を公開しています。
小説・詩・脚本を中心に、月ごとのテーマ読み物など随時更新中。
それぞれ違うタイプの作家たちによる、バラエティ豊かな作品をお楽しみください。(作者紹介はこちら。
ご意見・ご感想お待ちしております! コメント欄もしくはメールフォームよりお送りください。

なお、当サイトで公開している各作品の著作権はすべて作者に帰属します。
掲載された文章の無断転用を禁じます。

作者紹介

空疎

あなたはただのゼリーです
見える光は全部嘘
聞える音は全部嘘
あなたはただの
ふるえるゼリー
ひとりふるえる
ただのゼリー

中編小説「ゼリーの見た夢」より


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六井 象/I

 失恋した友人が髪の毛を短く切ってきた。
 彼女の髪の毛の中に、爆弾の導火線が一本混じっていたと知ったのは、それからすぐ後のことだった。


短編小説「鋏」より

個人サイト

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小石薫

美代子は必死だ。一生懸命に声を張り上げて、誰かが、聞いて、興味を持って、自分のいる教室のドアを開けてくれることを、ずっと待っている。
 伝えたいことがあると言った。
 私には、あるだろうか。伝えたいもの。伝えたい気持ち。私の中にあるのは、ぬるく、濡れそぼった、この、寂しさだけ。

短編小説「夕焼け校舎」より


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金魚風船


「私の事、好き?」


「え?」


「ごめん、いきなり」


「ごっつ好きやで」


「ほんとに?」


「当たり前やろ、俺のたった一人の娘なんやから」


「そっか」


間。



「やっぱ、別のことしよっか」


「え? なんで? 凄い楽しいのに」


「じゃあ、もっと楽しそうにやれよ。そんな下ばっかり見とったらな、楽しい事も嬉しいことも、いつの間にか全部通り過ぎてしまうぞ」

短編脚本「お父さん」より

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