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文芸サークル「鉄人四迷」のページ

文芸サークル「鉄人四迷」のページです。 オリジナルの小説・詩・脚本を発表しています。

「お父さん」(金魚風船)


「お父さん」


「うん?」


「遊ぼ」


「しんどい」


「この間、一緒に遊ぶって約束したじゃない」


「そうやった?」


「そうだった!」


「忘れた」


「この嘘つき、くそジジィ!」


「誰がくそジジィじゃ、このくそガキ! せっかくの休み位休ませろ」


「……絶対、駄目?」


「うん、絶対」


「わかった……」


「……わかったわ、何したいねん?」


「本当!?」


「良いから気が変わらん内に早く言え」

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「お父さん」


「うん?」


「遊ぼ」


「しんどい」


「この間、一緒に遊ぶって約束したじゃない」


「そうやった?」


「そうだった!」


「忘れた」


「この嘘つき、くそジジィ!」


「誰がくそジジィじゃ、このくそガキ! せっかくの休み位休ませろ」


「……絶対、駄目?」


「うん、絶対」


「わかった……」


「……わかったわ、何したいねん?」


「本当!?」


「良いから気が変わらん内に早く言え」


「えーと、じゃあ……お嫁さんごっこが良い!」


「うん?」


「ダメ?」


「いやぁ、まぁええけど……」


娘、人形を持ってくる。



「じゃあ、私が手を叩いたら始めてね」


「結構、ガチでやるんや」


娘、手を叩く。



「ただいま」


(色っぽい声で)「お帰り、ダーリン」


「え……」


娘、続けるように促す。



「……あー今日も残業で疲れちゃったよ」


「お疲れ様」


「お疲れ様です……」


「今日はどうする?」


「はい?」


「うふ。御飯にする? お風呂にする? そ・れ・と・も……」


「うん、もうやめよう」


「えーなんで!?」


「なんでもクソも無いわ。ってか、その一連のくだり何処で覚えた?」


「何処って、マイちゃんがよく言うから」


「マイちゃんとは縁を切りなさい」


「なんで!? お父さん、マイちゃんのこと良い子だって気にいってたじゃん」


「あの、すけこましが」


「すけこまし?」


「あ……」


「すけこましってどういう意味?」


「すけこましは……なんやその元気な女の子って意味や」


「じゃあ、アルプスの少女ハイジはすけこましなの?」


「あの子のすけこましっぷりにはクララもびっくりやわ」


「すけこましかー」


「まぁでも外であんまり大きな声では言わんといてくれ」


「なんで?」


「世の中そんなもんや」


「そっかぁー」


「何か違うのにしよ」


「例えば?」


「腕相撲」


「ハンデは?」


「無し」


「別に良いけど……それやって楽しいかな?」


「俺、腕相撲大好き」


「いや、そういう問題じゃなくて完全に見えてる勝負で勝って楽しいかなって」


「じゃあ、お前が勝ったら五億円あげる」


「マジで!? やる!」


「バカだなお前」


「あんたの子ですからね」


「よし、じゃあやろうか」


二人、腕相撲の態勢に入る。



「じゃあ、私がレディーゴーって言うね」


「オッケー」


「レディーーーーーーーーーーーーー」


「…………早く言えよ」


「ゴー!!」


娘、父の一瞬の気が抜けたのを理由にし、一気に父を倒す。



「イェーーーイ! ゲットだぜ五億!」


「今のあかんわ! 完全にズルやん」


「お父さんが勝手に力抜いたんでしょ」


「いや、でもそれはあかんわ。そんな話聞いてへんもん」


「五億! 五億! 五億!」


「頼むはもう一回やらしてくれ」


「だめ」


「ほんま、後生の頼みやから……」


「もうしょうがないな。次は絶対だよ」


「ほんと、ありがとうございます」


二人、再び腕相撲の態勢に入る。



「いくよ」


「うん」


「レディーーーーーーーーーー」


「だから、それあかんって」


「ゴーーー!」


父、再び勢いに負けそうになるがぎりぎりで立ち直し、



「ブハハハハハ、おりゃぁーーー!」


なんてことを言いながら、娘を倒す。



「おっしゃー、見たか何回も同じ手にかかると思うなよー」


「……」


「うん? 何、拗ねてんねん」


「別に。ただ、たかが腕相撲で勝ったくらいでそんなに嬉しいのかなって思って」


「何やねん、お前もさっきあんだけ喜んでたやろ」


「……」


「ほら、何か言えよ」


「くぅーーー凄い悔しい!」


「せやろな、何て言ったってお前は……」


「お父さんの子だもんね」


二人軽く微笑んだような気がする。



「何か違うことしよっか」


「そうだね」


「どうしよっかな」


「私、キャッチボールがしたい」


「ええけど、なんでいきなり?」


「……何となく」


「まぁ、ええわ。じゃあ、ボールとグローブ取ってくるな」


「ありがとう」


父、一旦、舞台上から消える。娘、一人取り残される。どことなく嬉しそうである。



「キャッチボールかぁ。楽しみだなぁー」


間。ゆっくりと照明が落ちだす。



「ちょっとお父さん、何してんのー」


間。



「早くしてよね、日暮れちゃうよ」


間。



「あ……お父さん……! ちょっとお父さん!」


父、戻ってくる。瞬時に照明も元に戻る。



「何やねん、いきなりでかい声だすなや」


「良かった」


「良かった?」


「ううん、何でも無い」


「変な奴やな。あ、先に軽く晩御飯の準備だけしたいからちょっと待ってくれる?」


「え……」


「今日、コロッケでええよな?」


「御飯はいいよ。後でコンビニで買お」


「でも今日はもうお父さん、コロッケの口なんやけど」


「時間が無いの」


「時間って……お前、何時間キャッチボールする気やねん」


「お願い!」


「分かったわ。よしじゃあ、行こうか」


「うん」


二人、去る。照明変化、日の入りのような空の色。



「もうこんな時間か、確かに時間無かったな」


「え? ……うん」


「じゃあ、ほら投げるからあっち行け」


「はい」


二人、無言でボールを投げたり、受けたりしている。



「なぁ」


「何?」


「楽しい?」


「凄く楽しい」


「そっか」


「うん」


またもや無言になる。



「なぁ」


「うん?」


「ほんまに楽しい?」


「うん、楽しいよ」


「そっか」


沈黙。



「なぁ、ほんまのほんまに……」


「ねぇ、お父さん」


「うん!?」


「私の事、好き?」


「え?」


「ごめん、いきなり」


「ごっつ好きやで」


「ほんとに?」


「当たり前やろ、俺のたった一人の娘なんやから」


「そっか」


間。



「やっぱ、別のことしよっか」


「え? なんで? 凄い楽しいのに」


「じゃあ、もっと楽しそうにやれよ。そんな下ばっかり見とったらな、楽しい事も嬉しいことも、いつの間にか全部通り過ぎてしまうぞ」


「ごめんなさい」


「どうしよっかな……あーこうしよう(近くにある棒を拾って)俺が今から、ボール投げたるから、お前これで打てや」


「え?」


「何難しいこと考えてんのか知らんけど、とりあえずこれで思いっきり打ってパーンって忘れろ」


「……」


「な?」


娘、頷く。



「じゃあ、まずは素振りからや。ちょっと振ってみ」


娘、棒立ちで振る。



「えーっとな、まず足腰はしっかりと地面に預けて重心を定める」


「こう?」


「いやぁ、それはちょっとやり過ぎかな。えーと、だから……」


「こう?」


「いや、だから……で、振った時には出来るだけ体は開かんようにして」


「こう?」


「うん、もうええわ。とりあえず、打ってみろや」


父、娘にボールを投げる。



「おりゃぁーーー!」


カーンという音が響き渡る。どうやら場外ホームランのようである。



「……本番に強いタイプやな、お前」


「エッヘン」


「いや、でも凄いわ」


「ほんと!?」


「うん、俺こんなにセンスってものを意識したんも初めてやわ」


「私も」


「じゃあちょっと、ボール取ってくるわ。次は絶対押さえる」


「望むところだ!」


父、ボールを取りに行く。娘、満面の笑み。その時、一筋の風が吹く。そしてゆっくりと暗転していく。



「あ……お父さん! お父さん!」


娘、父の背中を追おうとするが父の姿はもう無い。



「もう時間か……」


完全に暗転。暗転中、「ハナ、ハナ」と彼女の名前を呼ぶ声がする。素早く、明転。娘は部屋の端で蹲るようにして寝ている。



「ハナ」


「お父さん……どうしたの?」


「風呂が沸いたみたいやから、知らせに来た。寝てたんか?」


「うん……」


「そっか。ちゃんと布団で寝るんやで。風邪ひくとあかんから」


「……お父さん」


「どうした?」


「遊ぼ……」


「お父さん、明日も仕事で朝早いんや」


「そうだよね……」


父、部屋から出て行こうとする。



「お父さん、私腕相撲がしたい。ほら、腕相撲だったらそんなに時間取らないから」


「腕相撲?」


「お願い」


「分かった」


二人、腕相撲の態勢に入る。



「いくよ。レディーーーーーーーーー」


「……」


「ゴーーーーー…………」


しかし、娘すぐに父が力を入れてないことに気づく。そしてそのまま娘が勝つ。



「いやぁ、ハナも強くなったな。お父さんびっくりしたわ。じゃあ、風呂が冷めへん内に入りなさいね。後、寝るときは布団で寝るように」


「……」


父、部屋から出て行こうとする。



「お父さん……!」


父、振りむく。



「やっぱり何でもない」


「そっか」


父、去る。娘、立ち上がり部屋から出ていこうとするが再び蹲り。



「後、五分だけ……」


暗転。

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空疎

あなたはただのゼリーです
見える光は全部嘘
聞える音は全部嘘
あなたはただの
ふるえるゼリー
ひとりふるえる
ただのゼリー

中編小説「ゼリーの見た夢」より


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六井 象/I

 失恋した友人が髪の毛を短く切ってきた。
 彼女の髪の毛の中に、爆弾の導火線が一本混じっていたと知ったのは、それからすぐ後のことだった。


短編小説「鋏」より

個人サイト

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小石薫

美代子は必死だ。一生懸命に声を張り上げて、誰かが、聞いて、興味を持って、自分のいる教室のドアを開けてくれることを、ずっと待っている。
 伝えたいことがあると言った。
 私には、あるだろうか。伝えたいもの。伝えたい気持ち。私の中にあるのは、ぬるく、濡れそぼった、この、寂しさだけ。

短編小説「夕焼け校舎」より


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金魚風船


「私の事、好き?」


「え?」


「ごめん、いきなり」


「ごっつ好きやで」


「ほんとに?」


「当たり前やろ、俺のたった一人の娘なんやから」


「そっか」


間。



「やっぱ、別のことしよっか」


「え? なんで? 凄い楽しいのに」


「じゃあ、もっと楽しそうにやれよ。そんな下ばっかり見とったらな、楽しい事も嬉しいことも、いつの間にか全部通り過ぎてしまうぞ」

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