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文芸サークル「鉄人四迷」のページ

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「chorus」(空疎)

 ころころ転がる眼球を踏み潰す巨人の両腕にぶら下がった十五人の子どもたちが歌う歌はひどく陽気で、僕はどうしてか泣いてしまった。

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 ころころ転がる眼球を踏み潰す巨人の両腕にぶら下がった十五人の子どもたちが歌う歌はひどく陽気で、僕はどうしてか泣いてしまった。
 ころころ転がる眼球を踏み潰しながら、ぶちぶちと踏み潰しながら、巨人は両腕にぶら下がる十五人の歌う子どもたちを振り回して、ぶんぶんと振り回して歩いていく。ずんずんと歩いていく。僕は巨人に付き従って泣きながら歩いていく。転がる眼球を踏むまいと、爪先歩きで付いてく。
 左腕の七人はソプラノを、右腕の八人はアルトを、ぶんぶん振り回されながら歌っている。陽気な歌を歌っている。それは誰に向けられた歌なのか、どうして僕は泣いているのか、こんなにも強く泣いているのか、わからないまま歩き続ける、巨人に付き従って歩き続けている。
 右腕のひとりが振り回される腕から吹っ飛んで、宙をぐるぐると回って飛び回る。飛び回りながら陽気にアルトを歌い続ける。巨人は意にも介さず歩き続ける。ころころ転がる眼球を踏み潰しながら歩き続ける。ぶちぶちと踏み潰しながら歩き続ける。左腕のひとりが振り回される腕から吹っ飛んで、宙をぐるぐると回って飛び回る。飛び回りながら陽気にソプラノを歌い続ける。巨人は意にも介さず歩き続ける。ころころ転がる眼球を踏み潰しながら歩き続ける。ぶちぶちと踏み潰しながら歩き続ける。
 残りの十三人の子どもたちも左右順々に吹っ飛んでいって、とうとうみんな吹っ飛んで言って、宙をぐるぐると回って飛び回る。十五人の子どもたちが空中をぐるぐると飛び回りながら、それぞれにソプラノとアルトを歌い続ける。陽気な歌が空中をぐるぐると響き渡る。その中を巨人はころころ転がる眼球を踏み潰しながら歩き続け、僕はわんわん泣きながら転がる眼球を踏むまいと爪先歩きで巨人の後ろをついていく。
 空中をびゅんびゅん飛び回る子どもたちは皆陽気な歌を歌い続ける。これ以上ないくらいに陽気な歌を歌い続ける。歌の中を巨人は歩く。ころころ転がる眼球を踏み潰しながら巨人は歩く。僕は転がる眼球を踏むまいと、爪先歩きでついていく。わんわん泣きながらついていく。
 歌が響く歌が響く、辺りに歌が響いている。あっちからこっちから陽気なアルトとソプラノが響いてくる。響き渡る歌につられて、巨人もついに口を開く。ころころ転がる眼球を踏み潰しながら、巨人も陽気な歌を歌う。それは低い、とても低い声で、響き渡る陽気な歌に巨人も加わる。お腹に響く低い声で、響き渡る陽気な歌に巨人も加わる。そして僕もとうとう転がる眼球を踏み潰し、わんわん泣きながら口を開く。一緒になって歌を歌う。
 びゅんびゅん飛び回る子どもたちところころ転がる眼球を踏み潰しながら歩く巨人とわんわん泣きながらついていく僕はみんなで一緒に歌を歌う。ひとつの陽気な歌を歌う。この不可思議な合唱は一体誰に向けられているのか。僕らは歌う。大声で歌う。あらん限りに声を絞って、陽気な歌を歌っている。あぁ僕らはどこへ行くのか、この歌は誰に向けられているのか、わからないままに僕らは、声の限りに陽気な歌を歌っている。歌い続けている。歌い続けている。

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作者紹介

空疎

あなたはただのゼリーです
見える光は全部嘘
聞える音は全部嘘
あなたはただの
ふるえるゼリー
ひとりふるえる
ただのゼリー

中編小説「ゼリーの見た夢」より


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姉妹は仲の悪いまま年老いて
 町は背を伸ばし肥え太る
幾度かの通夜と性交を経て
 雪は降らなくなった
生まれた家は駅に食われたが
 風は相変わらず強く吹いている
姉妹は仲の悪いまま年老いたが
 市長に品が無い
 という意見だけは一致している


「姉妹は」より

個人サイト

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小石薫

美代子は必死だ。一生懸命に声を張り上げて、誰かが、聞いて、興味を持って、自分のいる教室のドアを開けてくれることを、ずっと待っている。
 伝えたいことがあると言った。
 私には、あるだろうか。伝えたいもの。伝えたい気持ち。私の中にあるのは、ぬるく、濡れそぼった、この、寂しさだけ。

短編小説「夕焼け校舎」より


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金魚風船


「私の事、好き?」


「え?」


「ごめん、いきなり」


「ごっつ好きやで」


「ほんとに?」


「当たり前やろ、俺のたった一人の娘なんやから」


「そっか」


間。



「やっぱ、別のことしよっか」


「え? なんで? 凄い楽しいのに」


「じゃあ、もっと楽しそうにやれよ。そんな下ばっかり見とったらな、楽しい事も嬉しいことも、いつの間にか全部通り過ぎてしまうぞ」

短編脚本「お父さん」より

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