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文芸サークル「鉄人四迷」のページ

文芸サークル「鉄人四迷」のページです。 オリジナルの小説・詩・脚本を発表しています。

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「メメ・エレファント」(I)

通りに立ち並ぶ街灯の中に、青い光を放つものが幾本か混じっている。

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 通りに立ち並ぶ街灯の中に、青い光を放つものが幾本か混じっている。青い街灯は電球が切れやすく作られていて、これらはすべて引退した象のためにそうなっている。青い街灯の電球が切れると、引退した象が背中に袋を担ぎ、夜中にそこにやってきて、古い電球に鼻をくるくる巻き付け、電球を外す。それから外した電球を口の中へ入れ、バリバリと砕くと、目を潤ませてごくんと飲み込む。そして大きなザラザラしたげっぷの声をあげながら、背中の袋から新しい電球を取り出し、街灯に取り付ける。引退した象にはそんな仕事しかない。しかし飢え死にするよりはましだろうと街の人々は言う。象としては飢え死にしたって構わないと思ってはいるが、象は頭の良い動物である。そういうことがあるとする。

 何かいわれのない罪で、長い間牢屋に入っていた。牢屋を出たときにはずいぶん年をとっていて、住んでいた家は平たくなっていた。色々苦労して安いアパートを見つけた。湿気た、がらんとした部屋にじっとしていると、牢屋にいた時とあまり変わらない気持ちがする。飯がないので爪を噛んでいる。夜、青い街灯の電球を、汚い、たるんだ皮の象が交換しているのを見ていると、悲しい気持ちになる。牢屋にいた時、一度鉄格子の窓の向こうを、手紙をくくりつけた風船が飛んでいるのを見たことがあった。風船の下の方が、街の光に照らされて、様々な色に光っていた。けれども、青い光だけは見たのか見なかったのか判然としない。そういう男がいるとする。

 ある晩、青い街灯の電球が切れる。男は家を飛び出す。手には縄を持っている。やがて象がやってきて、いつものように電球を換える。喉の肉に引っかかるガラスの破片が忌々しい。青い灯りが点くと、街灯で男が首を吊っている。象は迷い、迷った挙げ句、男の死体をバリバリと食べる。胃の内壁を、男の血がゆっくりとなぞっていくのがわかる。引退した象は目を潤ませながら、引退した象にふさわしい、広く、暗く、湿った寝床へと戻っていく。そういう話があるとする。

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作者紹介

空疎

あなたはただのゼリーです
見える光は全部嘘
聞える音は全部嘘
あなたはただの
ふるえるゼリー
ひとりふるえる
ただのゼリー

中編小説「ゼリーの見た夢」より


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姉妹は仲の悪いまま年老いて
 町は背を伸ばし肥え太る
幾度かの通夜と性交を経て
 雪は降らなくなった
生まれた家は駅に食われたが
 風は相変わらず強く吹いている
姉妹は仲の悪いまま年老いたが
 市長に品が無い
 という意見だけは一致している


「姉妹は」より

個人サイト

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小石薫

美代子は必死だ。一生懸命に声を張り上げて、誰かが、聞いて、興味を持って、自分のいる教室のドアを開けてくれることを、ずっと待っている。
 伝えたいことがあると言った。
 私には、あるだろうか。伝えたいもの。伝えたい気持ち。私の中にあるのは、ぬるく、濡れそぼった、この、寂しさだけ。

短編小説「夕焼け校舎」より


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金魚風船


「私の事、好き?」


「え?」


「ごめん、いきなり」


「ごっつ好きやで」


「ほんとに?」


「当たり前やろ、俺のたった一人の娘なんやから」


「そっか」


間。



「やっぱ、別のことしよっか」


「え? なんで? 凄い楽しいのに」


「じゃあ、もっと楽しそうにやれよ。そんな下ばっかり見とったらな、楽しい事も嬉しいことも、いつの間にか全部通り過ぎてしまうぞ」

短編脚本「お父さん」より

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