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文芸サークル「鉄人四迷」のページ

文芸サークル「鉄人四迷」のページです。 オリジナルの小説・詩・脚本を発表しています。

「無題」(I)

テーマ:海に降る雪


(誰もいない夕暮れのビーチ。砂浜に波が寄せては返す。入道雲、蝉の声。水平線の向こうへ夕陽が沈んでいく。砂浜は足跡でぐちゃぐちゃ。そこら中に衣服や、パラソル、ビーチチェア、浮き輪やカクテルグラス、カキ氷の容器、バーベキューの道具などが乱雑に放られている。)
(遠くで扉の開く音。砂浜を歩いてくる足音が近づいてくる。)

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(誰もいない夕暮れのビーチ。砂浜に波が寄せては返す。入道雲、蝉の声。水平線の向こうへ夕陽が沈んでいく。砂浜は足跡でぐちゃぐちゃ。そこら中に衣服や、パラソル、ビーチチェア、浮き輪やカクテルグラス、カキ氷の容器、バーベキューの道具などが乱雑に放られている。)
(遠くで扉の開く音。砂浜を歩いてくる足音が近づいてくる。)
(メイド服を着た背の高いロボットが現れる。誰もいない砂浜に一礼し、散らかった道具を一つ一つ片付けていく。)
(夕陽がほとんど沈み、空が菫色に染まる。ロボット、砂浜の掃除を終え、また一礼する。ロボット、そのままじっとしているが、やがてこめかみの辺りをちりちりと動かす。ロボットの頭の中に、電話の呼び出し音が響く。瞳に、暗くなっていく空が映っている。)
(電話の呼び出し音が途切れ、留守番電話のガイダンスに切り替わる。)

「モリーです。ご予定の帰宅時間を過ぎております。お迎えが必要な場合はご連絡ください」

(モリー、じっとして動かない。ビーチが完全に闇に包まれ、やがてゆっくり月明かりが差してくる。)
(と、モリーの頭の中に、着信音が響く。)

「はい。モリーで(ぶつん、と電話が切れる)」

(モリー、微動だにせず海を見つめている。どこからか虫の鳴き声が聞こえる。)
(遥か遠くから地響き。モリーは気づかない。)
(モリー、こめかみの辺りを動かし、電話をかける。)
(電話の呼び出し音が聞こえない。モリー、次の電話番号に電話をかける。誰も出ない。留守番電話に切り替わる。)

「モリーです。ご予定の帰宅時間を大幅に過ぎております。5分後にお迎えに上がりますので、その場で待機してください」

(遠くから地響き。モリーがぴくりと反応する。)
(モリー、砂浜を去ろうとする。)
(と、頭の中に着信音が響く。)

「はい。モリーです」
「助け……」

(ぶつん、と電話が切れる。)
(モリー、すぐに電話をかけ直す。しかし、呼び出し音は聞こえない。)
(モリー、次の電話番号に電話をかける。呼び出し音が鳴り続ける。)
(と、すぐ近くで地響き。モリー、体勢を崩して砂浜に倒れる。同時に空からメキメキと異音。)
(モリーが目をやると、空がゆっくりとひしゃげて、やがて真っ二つに割れる。裂け目から巨大な機械の掌が現れ、空を掴んでべろりと剥がす。)
(波音や虫の声が途切れ、砂浜や海の映像にノイズが混じり始める。)
(剥がされた空にぽっかりと穴があき、分厚い雲に覆われた本当の空が、しんしんと雪を降らせているのが見える。)

(見上げるほど巨大な機械の腕が地上を埋め尽くしている。彼らは住居を破壊し、人々やロボットを次々と握りつぶしていく。)

(モリーの頭の中に、着信音が鳴り響いている。)
(先ほどこの家の天井を剥がした腕が、モリーを見つけ、彼女の首を指先でつまむ。)

(同じ腕の小指の先では、若い男が潰れている。男が握り締めている携帯電話からは、着信音が鳴り続けている。)
(巨大な指が、モリーの首を音もなくちぎり取る。小指の先で潰れている男の携帯電話が、鳴り止む。)

(耳障りなサイレンが響く。機械の腕たちが動きを止め、のしのしと次の土地に向かって歩きはじめる。)

(ぶちぶちと乱れる映像の海、映像の砂浜に倒れるモリーの体の上に、雪が降り続ける。)

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作者紹介

空疎

あなたはただのゼリーです
見える光は全部嘘
聞える音は全部嘘
あなたはただの
ふるえるゼリー
ひとりふるえる
ただのゼリー

中編小説「ゼリーの見た夢」より


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六井 象/I

 失恋した友人が髪の毛を短く切ってきた。
 彼女の髪の毛の中に、爆弾の導火線が一本混じっていたと知ったのは、それからすぐ後のことだった。


短編小説「鋏」より

個人サイト

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小石薫

美代子は必死だ。一生懸命に声を張り上げて、誰かが、聞いて、興味を持って、自分のいる教室のドアを開けてくれることを、ずっと待っている。
 伝えたいことがあると言った。
 私には、あるだろうか。伝えたいもの。伝えたい気持ち。私の中にあるのは、ぬるく、濡れそぼった、この、寂しさだけ。

短編小説「夕焼け校舎」より


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金魚風船


「私の事、好き?」


「え?」


「ごめん、いきなり」


「ごっつ好きやで」


「ほんとに?」


「当たり前やろ、俺のたった一人の娘なんやから」


「そっか」


間。



「やっぱ、別のことしよっか」


「え? なんで? 凄い楽しいのに」


「じゃあ、もっと楽しそうにやれよ。そんな下ばっかり見とったらな、楽しい事も嬉しいことも、いつの間にか全部通り過ぎてしまうぞ」

短編脚本「お父さん」より

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