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文芸サークル「鉄人四迷」のページ

文芸サークル「鉄人四迷」のページです。 オリジナルの小説・詩・脚本を発表しています。

「ある海の上で」(空疎)

テーマ:海に降る雪


誰もいない
船もない
全く凪いだ海の上に
雪が降っている
雪が降っている
雪は降っては海に溶ける
瞬間微かな音がする
しゅるり
しゅるり
しゅるり
それはほんの微かな音だったけれど
雪は無限に降り続けて
微かな音は重なり合って
やがてひとつのメロディになる
しゅるり
しゅるり
しゅるりらら
全く凪いだ海の上に
響く雪のメロディ
そこへ降り立つ
ひとつの影
それは雪の紳士
素敵に着飾った雪の紳士
雪の紳士は水面に降り立つと
軽く一礼して
ダンスを始める
メロディにあわせて
ステップステップ
ダンスダンス
そこへ降り立つ
もうひとつの影
それは雪の淑女
素敵に着飾った雪の淑女
雪の紳士と淑女は
互いに手と手をとりあって
ふたり華麗なダンスを踊る
りらら
るらら
しゅるりらら
雪のメロディが流れて
全く凪いだ海の上に
雪は無限に降り続け
降った雪が波紋を起こして
波紋と波紋が重なって
波が起きる
さざめく水面
水面に踊る雪の紳士と淑女
全く凪いでいた海の上では
波打つダンスパーティー
ふたりは踊る
今ここが世界の中心
雪の紳士と淑女は
雪のメロディに包まれて
雪の起こす波の上で
ダンスダンスダンス
雪のダンス
誰もいない
船もない
見る者のない
海の上に
華麗なステップ
ふたりはダンス
踊り続ける
いつか雪のやむ
そのときまで

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文芸サークル「鉄人四迷」の作品を公開しています。
小説・詩・脚本を中心に、月ごとのテーマ読み物など随時更新中。
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作者紹介

空疎

あなたはただのゼリーです
見える光は全部嘘
聞える音は全部嘘
あなたはただの
ふるえるゼリー
ひとりふるえる
ただのゼリー

中編小説「ゼリーの見た夢」より


---------------------------

六井 象/I

 失恋した友人が髪の毛を短く切ってきた。
 彼女の髪の毛の中に、爆弾の導火線が一本混じっていたと知ったのは、それからすぐ後のことだった。


短編小説「鋏」より

個人サイト

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小石薫

美代子は必死だ。一生懸命に声を張り上げて、誰かが、聞いて、興味を持って、自分のいる教室のドアを開けてくれることを、ずっと待っている。
 伝えたいことがあると言った。
 私には、あるだろうか。伝えたいもの。伝えたい気持ち。私の中にあるのは、ぬるく、濡れそぼった、この、寂しさだけ。

短編小説「夕焼け校舎」より


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金魚風船


「私の事、好き?」


「え?」


「ごめん、いきなり」


「ごっつ好きやで」


「ほんとに?」


「当たり前やろ、俺のたった一人の娘なんやから」


「そっか」


間。



「やっぱ、別のことしよっか」


「え? なんで? 凄い楽しいのに」


「じゃあ、もっと楽しそうにやれよ。そんな下ばっかり見とったらな、楽しい事も嬉しいことも、いつの間にか全部通り過ぎてしまうぞ」

短編脚本「お父さん」より

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