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文芸サークル「鉄人四迷」のページ

文芸サークル「鉄人四迷」のページです。 オリジナルの小説・詩・脚本を発表しています。

「愛」(金魚風船)

屋上。先輩が一人立っている。そこに後輩がやってくる。


後輩
「すみません……いきなり呼び出しちゃって」

先輩
(終始、調子乗った感じで)「気にすんな。で、話って何?」

後輩
「もう分かってると思うんですけど……」

先輩
「何?」

後輩
「……」

先輩
「何も無いんなら帰るぜ」

後輩
「あ……ちょっと待って下さい」

先輩
「うん?」

後輩
「あの……実はその……私、先輩の事、考えてるといつもボーっとしちゃって夜も眠れないんです。自分が自分じゃないみたいっていうか……」

先輩
「で?」

後輩
「で、もしかしてこれが皆の言う恋なのかなって思ったりもして……最初は凄い怖かったんです。こんな気持ち初めてだから……でも初めてだからこそちゃんと伝えないとって思って……だからその、何が言いたいかというと……」

先輩
「もういいよ」

後輩
「え?」

先輩
「どうやらあんた一見、恥ずかしがり屋のシャイガールみたいだけど、あんたが言葉に託した俺への思い、ここにズンって来たぜ」

後輩
「じゃあ、私と……」

先輩
「よろしくな」


二人、笑顔。


先輩
「じゃあ、一緒に帰ろうか。記念すべき初デートだ」

後輩
「あ、ちょっと待って下さい」

-------------------------------------------------------------------------------------

屋上。先輩が一人立っている。そこに後輩がやってくる。


後輩
「すみません……いきなり呼び出しちゃって」

先輩
(終始、調子乗った感じで)「気にすんな。で、話って何?」

後輩
「もう分かってると思うんですけど……」

先輩
「何?」

後輩
「……」

先輩
「何も無いんなら帰るぜ」

後輩
「あ……ちょっと待って下さい」

先輩
「うん?」

後輩
「あの……実はその……私、先輩の事、考えてるといつもボーっとしちゃって夜も眠れないんです。自分が自分じゃないみたいっていうか……」

先輩
「で?」

後輩
「で、もしかしてこれが皆の言う恋なのかなって思ったりもして……最初は凄い怖かったんです。こんな気持ち初めてだから……でも初めてだからこそちゃんと伝えないとって思って……だからその、何が言いたいかというと……」

先輩
「もういいよ」

後輩
「え?」

先輩
「どうやらあんた一見、恥ずかしがり屋のシャイガールみたいだけど、あんたが言葉に託した俺への思い、ここにズンって来たぜ」

後輩
「じゃあ、私と……」

先輩
「よろしくな」


二人、笑顔。


先輩
「じゃあ、一緒に帰ろうか。記念すべき初デートだ」

後輩
「あ、ちょっと待って下さい」

先輩
「何?」

後輩
「私、先輩の為にある物を作ってきたんです。もしこの告白が駄目でもどうにかしてこの気持ちだけは形にして先輩に伝えたいなと思って」

先輩
「君の俺への気持ち。なんか嬉しいな」


後輩、可愛らしい紙に包まれた箱を渡す。


先輩
「かわいいね。ここで開けて良い?」

後輩
「是非」


先輩、紙を剥がし箱を開ける。中から、黒くて丸い塊が出てくる。


先輩
「うん……? 何これ……鼻糞?」

後輩
「私の先輩への気持ちです」

先輩
「……鼻糞が?」

後輩
「人はこれを愛と呼ぶのかもしれません」

先輩
「愛って……え?」

後輩
「一週間、徹夜で作りました」

先輩
「お母さんの手袋じゃ無いんだからさ……ってか愛って作れるの?」

後輩
「私もそれをずっと考えてたんです。愛って何かって。このモヤモヤを形にするにはどうしたら良いのかって。それでも考える内に少しずつ見えてきたんです。そして結果こうなりました」

先輩
「俺にはそのモヤモヤしか見えて来ないんだけど」

後輩
「今の私の力ではこの程度しか表わすことが出来ません。でもいずれ先輩とお付き合いを重ねる内に共に成長させていきたいと思ってます」

先輩
「成長って……これどうなんの?」

後輩
「ちょっと大きくなります」

先輩
「やだよ……」

後輩
「ご不満だったでしょうか? 私の愛ではご不満だったでしょうか?」

先輩
「いや、駄目じゃないんだよ。その愛を形にしてくれようとした君のアグレッシブな気持ち、俺すげー嬉しいし……でもね、俺も実際見たこと無いから分かんないよ、わかんないけど……愛ってさ形にしたら、こう……淡いピンクであわよくばハートの形? していて欲しかったな……みたいなところ無い?」

後輩
「ハートが良いんですね? 大丈夫です、こうやってギュッとしたら」

先輩
「いやいや、そういう問題じゃ無いんだよね。ってか、愛がそんな簡単に形変えたらいろいろ駄目だよね」

後輩
「すみません……」

先輩
「……いや、でもありがとう。凄い嬉しいよ」

後輩
「ほんとですか?」

先輩
「当たり前じゃん。じゃあ、帰ろうか」

後輩
「あの……」

先輩
「何?」

後輩
「もし良かったら、食べて下さい」

先輩
「え……」

後輩
「私の愛、食べて下さい」

先輩
「え……やだ」

後輩
「え!? なんでですか!? 先輩!」

先輩
「なんでって……え? ごめん。これ食べれたの?」

後輩
「多分食べれます」

先輩
「多分じゃまずいよね」

後輩
「きっと食べれます」

先輩
「いやそこは百パーセントじゃないと困るんだよ」

後輩
(キレ気味で)「じゃあ、絶対食べれます」

先輩
「なんでちょっとキレてんの」

後輩
「やっぱりだめですよね……私ごときの愛では先輩の前では何の意味も成しませんよね……」

先輩
「なんか、さっきからそれちょっとずるくない……」


後輩、急に咳き込みだす。


後輩
「ハァ、ハァ……」

先輩
「え、どうしたの? 大丈夫!?」

後輩
「だ、大丈夫です……ハァ。 私、ハァ、これ持病で、ハァ……」

先輩
「喘息持ちだったの!?」

後輩
「はい、昔から、ハァ、自分の、ハァ、思い通りに、ハァ、ならないと、ハァ、喘息が、ハァ、出ちゃうんです、ハァ」

先輩
「すげぇーわがままな体だな」

後輩
「ごめんなさい、ハァ……ゴホゴホゴホ……」

先輩
「でもほんとにまずそうだね。ちょっと、俺、保健室行って先生呼んでくるわ!」

後輩
「行かないで……ゴホゴホ」

先輩
「え……?」

後輩
「側にいて下さい、ゴホ、……」

先輩
「でも……このままじゃ……俺一人じゃ、何も出来ないし……」

後輩
「大丈夫、ゴホ、一つだけあります……」

先輩
「この際、人工呼吸でも何でもやるよ」

後輩
「あの……」

先輩
「あの?」

後輩
「私の愛を食べて下さい」

先輩
「なんでそうなるかな」

後輩
「ゴホゴホゴホゴホゴホ」

先輩
「分かったよ! 食べるよ、食べれば良いんでしょ!」

後輩
「はい、お願いします」

先輩
「あれ喘息は?」

後輩
「ゴホゴホゴホゴホゴホ」


先輩、黒い塊を持ちしばらく躊躇するが、心を決め一口食べる。


後輩
「……どうでしたか……?」

先輩
「……」

後輩
「どうでしたか……先輩?」

先輩
「……味が」

後輩
「味が?」

先輩
「しない……」

後輩
「味がしない?」

先輩
「うん、全く」

後輩
「え……そんなはずありません……!」

先輩
「いや、俺も正直びっくりしてる。こんだけグロテスクな色してたら、なんか味するよ、普通」

後輩
「もう一口食べてください。まだ中に届いて無いのかも」

先輩
「中、何入ってんの……?」

後輩
「お願いします!」


先輩、もう一口食べる。


後輩
「どうですか?」

先輩
「ごめん、ますますしなくなった。なんか砂食ってるみたい」

後輩
「そんなはずありません!」

先輩
「いや、ほんとに……」

後輩
「口に入れた瞬間にほのかな甘みが広がるんです。そして、その後にやって来るやり切れない酸味。でも、それは決して、苦痛な訳ではなく、ある種の通過儀礼としてやるせなさを先輩の舌に訴えかけるんです……そう、まさに初恋のように!」

先輩
「あ、そうなんだ……」

後輩
「もう一口、もう一口食べてください」

先輩
「え……」

後輩
「後、一口で良いんです」

先輩
「……」

後輩
「きっとこの子、私と同じでスロー・スターターなんです。後、一口位でじんわりと舌にきますから……!」

先輩
「ねぇ」

後輩
「はい……?」

先輩
「やっぱり、さっきの無しにして貰っても良いかな……?」

後輩
「……何をですか?」

先輩
「その、付き合うみたいなやつ……」

後輩
「え……何でですか?」

先輩
「いや、そのなんて言うのかな……こんなにファンキーな人だと思って無くて」

後輩
「私じゃ無理だと……」

先輩
「ごめんね」

後輩
「……」

先輩
「じゃあ、俺帰るわ。あ、喘息はもう大丈夫なの?」

後輩
「一応思い通りになったので治りました……」

先輩
「そっか、じゃ」


先輩、去る。後輩、一人取り残される。心無しか目にはうっすらと涙が。


後輩
「ばか、ばか、ばか……」


なんてことを言いながら、包装紙をぐちゃぐちゃにする。そして、ゴミ箱の前に立ち、黒い物体を捨てようとして、


後輩
「燃えるのかな、これ……」


暗転。

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空疎

あなたはただのゼリーです
見える光は全部嘘
聞える音は全部嘘
あなたはただの
ふるえるゼリー
ひとりふるえる
ただのゼリー

中編小説「ゼリーの見た夢」より


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六井 象/I

 失恋した友人が髪の毛を短く切ってきた。
 彼女の髪の毛の中に、爆弾の導火線が一本混じっていたと知ったのは、それからすぐ後のことだった。


短編小説「鋏」より

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小石薫

美代子は必死だ。一生懸命に声を張り上げて、誰かが、聞いて、興味を持って、自分のいる教室のドアを開けてくれることを、ずっと待っている。
 伝えたいことがあると言った。
 私には、あるだろうか。伝えたいもの。伝えたい気持ち。私の中にあるのは、ぬるく、濡れそぼった、この、寂しさだけ。

短編小説「夕焼け校舎」より


---------------------------

金魚風船


「私の事、好き?」


「え?」


「ごめん、いきなり」


「ごっつ好きやで」


「ほんとに?」


「当たり前やろ、俺のたった一人の娘なんやから」


「そっか」


間。



「やっぱ、別のことしよっか」


「え? なんで? 凄い楽しいのに」


「じゃあ、もっと楽しそうにやれよ。そんな下ばっかり見とったらな、楽しい事も嬉しいことも、いつの間にか全部通り過ぎてしまうぞ」

短編脚本「お父さん」より

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