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文芸サークル「鉄人四迷」のページ

文芸サークル「鉄人四迷」のページです。 オリジナルの小説・詩・脚本を発表しています。

むだい(六井 象)

あたま が おもい おもい で おもい
いいこと ないか ないから ないた
おもいで もいで といれ に すてて
いいこと ないな ないから ないた

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自由律俳句 百首(2012-2016詠)(六井象)


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「冬子」(六井 象)


 近所に住んでいた幼馴染の女の子は生まれた時から難しい病気で、それは足の方から肉が少しずつ剥がれ、その一枚一枚が蝶になって飛んでいってしまうというものだった。はじめのうちは二人とも、青白い顔の彼女の親や医者を横目に、その幻想的な光景を面白がっていたが、ある日私はそのことで父に叱られ、それから彼女を特別なものとして見てしまうようになった。
 小学校に上がると私には友達が増え、彼女と遊ぶ回数は減っていった。彼女の家は通学路の途中にあったから、寄ろうと思えばいつでも寄れたのだが、大人たちは彼女をとてもとても慎重に扱っていたので、彼女の家にいる間じゅう私はその監視の下に置かれ、とても窮屈な思いをさせられたので、新しくできた友達に彼女を紹介したりすることも何だかためらわれた。そのころには彼女は腰の辺りまで肉が剥がれてしまっていて、家の前を通ると時々、彼女の部屋の小さな窓から蝶がひらひらと飛び出してくるのを見て、私は何となくもやもやした気分になった。
 それでも彼女は唯一の友人である私に、しょっちゅう電話をよこしたが、学校にも行けず、一日じゅうテレビばかり観ていたので、彼女の話す内容はどうしても子供っぽくて、私は彼女と話すのが退屈で仕方なかった。中学校三年のある日、受験勉強をしていた私のところへ彼女から電話がかかってきて、当たり障りのない世間話のあと、ふいに彼女が「そういえば最近化粧の勉強をしている」と言ったので、もっと他に学ぶことがあるだろうと言うと、彼女は大笑いした。本当は、誰にも見せるあてがないのにそんなことしてどうするんだ、と思ったが、黙っていた。
 高校に上がる頃には通学路が変わり、彼女の家の前も通らなくなっていて、電話のやりとりもいつの間にかなくなった。時折人づてに聞く話では、彼女は私にずっと会いたがっているらしく、そういうことを耳にするたびに私は、色々なことを理由に彼女を避けている自分に負い目を感じたりもした。もはや彼女の体がどれほど病に侵されているかを知る勇気もないまま、年を経るごとに私には友達が増えて、ふとした拍子に恋人まで出来、そして彼らはみな楽しくて気の良い連中だったが、しかしもやもやした気分はいつも心の隅にこびりついて離れなかった。



 ある冬の晩、自分の部屋で音楽を聴いていると、窓の外をちらちらと光るものが飛んでいるのが見えた。よく見るとそれは一匹の蝶だった。彼女に違いないと直感した。慌てて窓を開けると、蝶はまっすぐ私の胸に飛び込んできて、何か言いたげに瞳をきょろきょろ動かしたあと、あっけなく息絶えた。その白い双羽には、子供っぽい、ピンク色の口紅の跡がついていた。

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「羽根」(六井 象)

 近所の家の前を通りかかったところ、塀にトンボがとまっていて、家の方を見ながら首をぐるぐる動かしていた。すぐ傍の窓の向こうで誰かが指でも回しているのかと思い、つま先立ちになってちょっと中を覗くと、お札みたいなものがベタベタ貼られた部屋の中で、女の生首が笑いながら、観覧車みたいにぐるぐる回っていた。その視線はトンボをまっすぐに捉えていた。トンボの方はもう充分目を回している様子だが、しかし、果たしてどうやって捕まえる気だろう、と思った。顛末を見届けたかったが、バイトの時間が近づいていたので、仕方なくその場を後にした。
 帰りに同じ道を通ると、塀にトンボはいなかった。部屋の中では女の生首が、頬に涙の跡を残したまますうすう眠っていた。トンボに逃げられたのか、愛想を尽かされたのかはわからなかった。

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「鋏」(六井 象)

 失恋した友人が髪の毛を短く切ってきた。
 彼女の髪の毛の中に、爆弾の導火線が一本混じっていたと知ったのは、それからすぐ後のことだった。

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「夜話(報告)」(I)


「今朝、洗面所の蛇口をひねったら、水じゃなくて、かわいらしい女の子の指人形をはめた、毛だらけの太い指がにゅっと出てきて、『あれれ? ここはどこ?』とでも言いたげな、おどけた動きをし始めたんです。
「もちろん驚きはしましたけど、そのときは遅刻しそうでとにかく急いでいたので、驚き以上に何だかものすごく腹立たしくなり、反射的に指を掴んで、真っ二つに折ってしまったんですね。
「で、まあ、それから何だかんだあって、結局会社は遅刻してしまったんですけど、
「この“何だかんだ”の部分については、あの指のことと関係があるのかどうかが今のところ、ちょっとわからないので、ここでは話さないことにします」

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「ある海の上で」(空疎)

テーマ:海に降る雪


誰もいない
船もない
全く凪いだ海の上に
雪が降っている
雪が降っている
雪は降っては海に溶ける
瞬間微かな音がする
しゅるり
しゅるり
しゅるり
それはほんの微かな音だったけれど
雪は無限に降り続けて
微かな音は重なり合って
やがてひとつのメロディになる
しゅるり
しゅるり
しゅるりらら
全く凪いだ海の上に
響く雪のメロディ
そこへ降り立つ
ひとつの影
それは雪の紳士
素敵に着飾った雪の紳士
雪の紳士は水面に降り立つと
軽く一礼して
ダンスを始める
メロディにあわせて
ステップステップ
ダンスダンス
そこへ降り立つ
もうひとつの影
それは雪の淑女
素敵に着飾った雪の淑女
雪の紳士と淑女は
互いに手と手をとりあって
ふたり華麗なダンスを踊る
りらら
るらら
しゅるりらら
雪のメロディが流れて
全く凪いだ海の上に
雪は無限に降り続け
降った雪が波紋を起こして
波紋と波紋が重なって
波が起きる
さざめく水面
水面に踊る雪の紳士と淑女
全く凪いでいた海の上では
波打つダンスパーティー
ふたりは踊る
今ここが世界の中心
雪の紳士と淑女は
雪のメロディに包まれて
雪の起こす波の上で
ダンスダンスダンス
雪のダンス
誰もいない
船もない
見る者のない
海の上に
華麗なステップ
ふたりはダンス
踊り続ける
いつか雪のやむ
そのときまで

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「無題」(I)

テーマ:海に降る雪


(誰もいない夕暮れのビーチ。砂浜に波が寄せては返す。入道雲、蝉の声。水平線の向こうへ夕陽が沈んでいく。砂浜は足跡でぐちゃぐちゃ。そこら中に衣服や、パラソル、ビーチチェア、浮き輪やカクテルグラス、カキ氷の容器、バーベキューの道具などが乱雑に放られている。)
(遠くで扉の開く音。砂浜を歩いてくる足音が近づいてくる。)

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「蛇の囁き」(空疎)

こしょこしょこしょ

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「歌を歌いながら」(空疎)

テーマ:瓶の中の太陽



 この世界から、太陽が消えて久しい。昨日、とうとう最後の友達が死んだ。真っ暗闇の中で。

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当サイトについて

文芸サークル「鉄人四迷」の作品を公開しています。
小説・詩・脚本を中心に、月ごとのテーマ読み物など随時更新中。
それぞれ違うタイプの作家たちによる、バラエティ豊かな作品をお楽しみください。(作者紹介はこちら。
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作者紹介

空疎

あなたはただのゼリーです
見える光は全部嘘
聞える音は全部嘘
あなたはただの
ふるえるゼリー
ひとりふるえる
ただのゼリー

中編小説「ゼリーの見た夢」より


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六井 象/I

 失恋した友人が髪の毛を短く切ってきた。
 彼女の髪の毛の中に、爆弾の導火線が一本混じっていたと知ったのは、それからすぐ後のことだった。


短編小説「鋏」より

個人サイト

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小石薫

美代子は必死だ。一生懸命に声を張り上げて、誰かが、聞いて、興味を持って、自分のいる教室のドアを開けてくれることを、ずっと待っている。
 伝えたいことがあると言った。
 私には、あるだろうか。伝えたいもの。伝えたい気持ち。私の中にあるのは、ぬるく、濡れそぼった、この、寂しさだけ。

短編小説「夕焼け校舎」より


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金魚風船


「私の事、好き?」


「え?」


「ごめん、いきなり」


「ごっつ好きやで」


「ほんとに?」


「当たり前やろ、俺のたった一人の娘なんやから」


「そっか」


間。



「やっぱ、別のことしよっか」


「え? なんで? 凄い楽しいのに」


「じゃあ、もっと楽しそうにやれよ。そんな下ばっかり見とったらな、楽しい事も嬉しいことも、いつの間にか全部通り過ぎてしまうぞ」

短編脚本「お父さん」より

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